「砂糖」という言葉をパッと聞いて、皆さんはどんなイメージを抱くでしょうか?
食べ過ぎると虫歯になる?
血糖値を急上昇させる?
取りすぎた分は脂肪に変わってしまう?
とまあ色々なことを思い浮かべると思いますが、共通しているのは「砂糖は体に良いものだと思いますか?」という問いをした場合、おそらく9割の人は「ノー」と答えるでしょう。砂糖に対して「体に良いもの」という印象はなく、反対に体に害を及ぼすイメージが多いですよね。
何をもって体に良いものとするかというのは、置かれている状況やその人の立場によって異なります。
砂糖は吸収が早く即エネルギーとして消費できるという性質がありますが、これが先程の「血糖値を急上昇させる」という砂糖のデメリットにもなるわけですね。
しかし見方を変えると、例えば雪山で遭難してロクに食べ物を取ることが出来ないなんて状況に置かれれば、砂糖は間違いなく「体に良いもの」となるでしょう。
そして、私はどういう基準で「砂糖は体に良いものかどうか」をお話したいのかというと、それは「腸内環境」という観点から見てのものです。
ということでこちらでは
・砂糖が体に良いものなのかどうか?
・砂糖よりもっと良い代わりになるものがあるのかどうか?
ということをお話していきたいと思います。
目次
砂糖は消化に良いけど・・・
胃や腸という臓器を考えながら「体に良いもの」と聞いた時に真っ先に思い浮かぶのは「消化に良いものかどうか」ということではないでしょうか。
消化に良いということは胃や腸がそれを分解するための負担が小さいということであり、無駄にエネルギーを使わなくて済むから体に良い、という理屈ですね。
では砂糖の消化のしやすさはどの程度のものなのか?
砂糖がどんな構成の物質なのかというと、スクロースという物質が主成分で出来ています。
スクロースについて化学的な言い方をすると、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した二糖類のこと。
スクロースは小腸に存在する消化酵素サッカラーゼによってグルコースとフルクトースに分解され、速やかに吸収されて小腸から血液に流れ込みます。
つまり砂糖は「消化に良いもの」ということになります。冒頭でも少し触れましたが、その消化の早さがある故に血糖値を急上昇させる、もしくは雪山で遭難しても即効性のあるエネルギー源になってくれるというわけですね。
消化に良い=腸に良いではない
消化に良い砂糖は腸内環境の観点から見て「体に良いもの」と言えるのでしょうか?
結論から言えば、体に良いものでも体に悪いものでもなく砂糖は腸には全く影響を及ぼさないものということになります。
腸内細菌の善玉菌というのは糖質をエサにして活性化していますが、じゃあ砂糖みたいな糖質は腸内細菌にとっても良いものなのかというとそうではなく、辿り着く前に吸収されてしまうので大腸には影響を及ぼさないのです。
私達が目にしたり耳にする「腸内フローラ」「腸内細菌」という言葉の「腸」というのは、通常は小腸ではなく大腸のことを指します。
もちろん小腸にも細菌はいるのですが、大腸には文字通りの「桁違い」の数だけ多い細菌が住んでいます。まるで重要性が異なるのです。
だから腸内細菌を活性化させるという観点で見た時に、大腸に辿り着く前に吸収されてしまっては意味がありません。
砂糖の健康リスク
腸内フローラの観点から見て砂糖は体に良いものではない、となれば前述の
「食べ過ぎると虫歯になる」
「取りすぎると脂肪として蓄えてしまう」
「血糖値を急上昇させてしまう」
というリスクばかりが気になるところですよね。腸内フローラという観点から見れば砂糖は無害ですけど、少なくともこれらのリスクを冒してまで砂糖を取るメリットというのはありません。
それどころか、砂糖を取ることによって胃の蠕動運動がピタリと止まってしまう糖反射という害を及ぼすという報告が東大の実験で報告されています。
この場合は胃の動きを弱めてしまうという報告ですけど、蠕動運動というのは胃から腸にかけての消化器官で連動している動きですから、胃の動きが止まることで腸に対して及ぼす影響というのも無視できません。
この「糖反射」の実験は、なぜ砂糖が蠕動運動を抑制したのかという根拠についてはまだ確定に至っておらず何とも言えませんので「砂糖は腸には無害」と言いましたが、この実験の真偽がどちらであれ砂糖は大腸に良い影響を与えないというのは現時点では確かなことです。
砂糖とは反対に体に良いもの
腸内フローラに良い影響を与えるものは何なのかというと、ここまでのお話ですでにおわかりだとは思いますが砂糖とは反対にすぐに消化・吸収されない糖質こそがそれに当たるのです。
その筆頭として挙げられるのが食物繊維やデンプンです。
これらは砂糖とは違ってヒトが消化酵素を体に持っておらず消化・吸収が出来ないか、もしくは分解しにくいという性質を持っています。
もっと端的に言えば「消化しづらさ」ということなのですが、消化のしづらさこそが腸には良いのです。消化されなければ小腸を通過して大腸に届けることが可能だからです。
そして例えヒトが消化できないとしても、腸内細菌(特に善玉菌)はそれらをエサにして活性化し、繁殖して数を増やしたり、短鎖脂肪酸を生み出して様々な体に良い効果をもたらしてくれます。
食物繊維(特に水溶性食物繊維)は野菜などの食品にも多く含まれているものがあるし、でんぷんは主食であるお米やパンを筆頭にジャガイモなどにも含まれているのでそれらは腸内フローラ改善に役立つ「体に良いもの」ということになるんですが、「甘くない」という問題点があります。
水溶性食物繊維を多く含む食品一覧も書いてますので参考までに。
甘くなくては「体に良い砂糖は?」「砂糖の代わりになるような甘いものは?」という疑問に対しての解決策にならないのです。
ここでようやく本題。じゃあ砂糖の代わりになるような甘味料で、かつ腸内フローラの観点から体に良いものは何か?というと・・・それはオリゴ糖です。
オリゴ糖というのは、簡単に言えば「消化・分解されにくい糖質」ということで食物繊維やデンプンと同じもの。
これらと違うのは食物繊維やデンプンがかなり複雑な構造をしているのに対して、オリゴ糖は糖が数個くっついた構造になっているという点です。
食物繊維やデンプンを少し細かくするとこのオリゴ糖になるというイメージですね。
オリゴ糖に対しても人間は消化酵素を持っておらず、ほとんど分解されずに大腸へと届けることが出来ます。そして腸内細菌のエサになるのは食物繊維やデンプンと同じ。
オリゴ糖と食物繊維やデンプンが決定的に違うのは「甘さを感じられる」という点です。オリゴ糖にも色々な種類があるのですが、大体砂糖の20~60%程度の甘さになっています。
そして甘さを感じるけど消化酵素が無いので砂糖よりも低カロリーという利点もあります。それどころかオリゴ糖のカロリー表示というのはそこから作られる短鎖脂肪酸で換算されたものなので、見た目の数字以上に太りにくいだけでなく、むしろダイエット効果すらも期待できます。
砂糖ほどではないけれどもある程度の甘さがあり、かつ食物繊維やでんぷんと同じように大腸へと届けることができるオリゴ糖なら十分に砂糖の代わりの甘味料として使い道があるのではないでしょうか。
ただオリゴ糖というのは分解されにくいとはいえ一部分解されてしまうものもあります。そのためなのか大腸の比較的階層が浅い部分に対して効果を発揮するところがあり、大腸の奥の方にはそれほど効果を発揮できないという短所もありますので、そこは食物繊維やでんぷんなどのより複雑な糖質の役目というわけですね。
まあ砂糖の代わりになるというのは確かですので、積極的に日常に取り入れていきたいですね!
ただ市販のオリゴ糖シロップは砂糖や人工甘味料など余計なものが多く入っていて純度が高くないことが多いので、オリゴ糖を選ぶなら純度の高いものを選ぶようにしましょう。
まとめ:体に良い砂糖とは何かを腸内環境の観点で!代わりになる甘いものは?
砂糖が体に良いかどうかを腸内フローラの観点から考え、その代わりになるようなものは無いか?ということをお話してきましたが、まとめると
・砂糖は大腸に届く前に吸収されてしまうので腸には意味がない
・砂糖の代わりにオリゴ糖を使うと腸内フローラに良い影響を与えることができる
ということですね。オリゴ糖はお菓子作りなどで砂糖の代わりに使うことはもちろん、肉じゃがやすき焼きなどでも使えるし味噌汁やコーヒーに入れるなど様々な使い道がありますのでぜひ使ってみてくださいね。