糖アルコールというのは健康食品で結構よく聞く言葉ですよね。
アルコールと聞くとついお酒のことを思い浮かべると思いますが、世の中には様々なアルコールが存在します。糖アルコールもその一種ですね。
キシリトールは糖アルコールの代表的な存在なのですが、どうもこの糖アルコールは人工甘味料と混同しがちです。
そして気になるのは「糖」という言葉があることから、腸内細菌にはどのような効果があるのかということです。
こちらでは糖アルコールの種類や腸内細菌に及ぼす効果などをお話していきたいと思います。
目次
糖アルコールとは
糖アルコールとはそもそも何なのかというと、これを詳しく知ろうとすると糖とは何なのか?アルコールとは何なのか?という難しい話が必要になってきてしまいます。
厳密な言い方をするならアルドースもしくはケトースのアルデヒド基(-CHO)もしくはケトン基(>C=O)が還元されてヒドロキシ基(-OH)になったものという風になりますし、この言い方もアルドースとかケトースって何なのか?という理解が必要になってきます。
なので、ざっくりと「糖の構造とアルコールの構造を合わせ持ったもの」ということになります。
糖でもありアルコールでもある、それが糖アルコールなのです。
この方がきっとわかりやすい覚え方だと思います。
糖アルコールの種類
糖アルコールにはキシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトールなどの種類があります。これらはガムなどにも使われる甘味料としてよく名前を聞きますよね。特にキシリトールなんてのは虫歯予防のガムに配合されているのもあってご存知だと思います。
糖アルコールの種類についてはwikipediaにわかりやすいものがあったのでそのまま抜粋しておきます。
名称 甘みの強さの比 カロリー
(kcal/g)甘みの強さと
カロリーの比エリトリトール 0.7 [1] 0.2 [1] 3.5 グリセリン 0.6 [3] 4.3 [3] 0.14 HSH 0.4–0.9 [1] 3.0 [1] 0.13–0.3 イソマルト 0.5 [1] 2.0 [1] 0.25 ラクチトール 0.4 [1] 2.0 [1] 0.2 マルチトール 0.9 [1] 2.1 [1] 0.43 マンニトール 0.5 [2] 1.6 [1] 0.31 ソルビトール 0.6 [1] 2.6 [1] 0.23 キシリトール 1.0 [2] 2.4 [1] 0.42 スクロース
(比較)1.0 4.0 0.25 出典
[1] Calorie Control Council
[2] Antonio Zamora, “Carbohydrates”
[3] Jeremy Keough, “Glycerol”
※参考 Wikipedia
糖アルコールと人工甘味料の違いとは?
この糖アルコールと混同しがちなのが「人工甘味料」というやつです。人工甘味料の種類にはアスパルテーム、サッカリン、スクラロース、アセスルファムKなどがあり、いわゆるゼロカロリー系の飲料に使われていますね。
人工甘味料はその名の通り「人工的に作られた甘味料」であるのに対して、糖アルコールは必ずしも人工ではなく自然界にも存在する物質です。
例えば虫歯予防に効く糖アルコールとして有名な「キシリトール」は人工的に作る事もできますが、実はイチゴなどの果物にも含まれていて「イチゴは虫歯に良い」と言っている歯医者さんもいるくらいです。
混同しがちな糖アルコールと人工甘味料ですが、これは名前を見ることで違いを判断する覚え方があります。
糖アルコールはその名前の通りアルコールの一種ですが、アルコールは語尾に「ol」を付けた物質名になっているのです。
アルコールの有名なところで言うと「メタノール」や「エタノール」がありますが、いずれも最後に「ール」ってのが付いてますよね。
そしてキシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトールとこれら全て「ール」という物質名になってるため、糖アルコールということになるのです。
「ール」というのが最後に付くものが糖アルコール、というのが簡単な覚え方でしょうね。
単なるアルコールはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールと言った感じで「-anol」という音がつきますが、糖アルコールは元々の糖の名前に「-ol」とつけるので少し名前が複雑になる、というのもざっくりとした覚え方ですね。
糖アルコールが悪玉菌を増やす?
当サイトでは、オリゴ糖や水溶性食物繊維といった複雑な糖類を取ることで腸内の善玉菌のエサにすることを主眼に置いていますが、この点において糖アルコールはどうなのでしょうか?
糖アルコールが普通の糖質(グルコース、フルクトース、ガラクトースなど)と明確に異なる点は「体に吸収されにくい」というところにあります。
グルコースやフルクトースといった単糖類は通常、そのまま取っても小腸で吸収されてしまって大腸へと届ける事ができず、善玉菌のエサになることも期待できません。
しかし糖アルコールは体が代謝できず吸収されにくいという性質から、例え単糖であっても吸収されずに大腸へ届けることが出来ます。
糖アルコールが吸収されにくいというのは、キシリトール配合ガムの「取りすぎるとお腹がゆるくなることがあります」という注意書きからもわかります。
つまりこれは、吸収されにくく多量に取ると消化不良を起こしてしまうので下痢になるということです。この点はオリゴ糖も同じですね。
問題は吸収されずに大腸へ届いた糖アルコールが腸内細菌にどのような効果をもたらすのか?ということです。
糖アルコールについては、「吸収されにくく善玉菌のエサになる」と紹介しているサイトがある一方で「いやいや、糖アルコールは悪玉菌のエサになってしまうんだ」と紹介しているサイトもあります。
糖アルコールが悪玉菌のエサになるという根拠はこの英文での論文なのですが、これを全部読もうとすると正直良くわかりませんよね。
「善玉菌」「悪玉菌」なんて分けて考えていますが、これは私達人間がわかりやすいように便宜上、勝手にそう分類しているだけの話であって、本来腸内細菌に「善」「悪」というように明確に2つにわけることは難しいのです。
そして「善玉菌は糖質を好む!」「悪玉菌はタンパク質を好む!」というのも分かりやすくそう言っているだけで、厳密には悪玉菌であっても糖を好んで代謝する腸内細菌というのも存在します。
そもそも細菌というのは全般的に糖を好んで代謝しやすい傾向があるので、そういう意味では「糖アルコールを取ると悪玉菌が増える!」というのは正しいでしょう。ただそれは他の糖類にも同じことが言えますけどね。
糖アルコールはビフィズス菌を増やすのか
仮に糖アルコールが腸内の悪玉菌を増やすのだとしても、それ以上に善玉菌の代表であるビフィズス菌を増やす効果があるのならば取る価値はあります。
実は、それぞれの糖類の種類ごとにどれだけビフィズス菌が反応するか、ということをまとめた表というのがあります。
+・・・90~100%の菌株が分解反応を起こした
ー・・・90~100%の菌株が分解反応を起こさなかった
d・・・11~89%の菌株が分解反応を起こした
w・・・僅かに分解反応を起こした
色々と見慣れない名前も多いこの表ですが、この中にある糖アルコールというのはキシロース、ソルビット、マンニットというものです。
キシロースはキシリトールが還元されて形を変えたもので、ソルビットとマンニットはそれぞれソルビトールとマンニトールの別名です。
これらのビフィズス菌活性効果はどうかというと、まずソルビットとマンニットはどの種類のビフィズス菌にもほとんど反応していないことがわかります。
キシロースは比較的反応が良い方だとは思いますが、それでもビフィズス菌の半分くらいはほとんど反応していません。
考えてみればキシリトールというのは「乳酸産生菌に利用されないから虫歯になりにくい」というものでしたが菌に利用されないということからイメージとしてもビフィズス菌に利用されないというのは納得していただけると思います。
これらを加味すると糖アルコールは「悪玉菌を増やす可能性がある」一方でビフィズス菌を増やす効果はそれほどなく、リターンよりもそのリスクの方が大きいのでは、と私は考えます。
まあ代謝されにくく虫歯の原因になる酸を作らないというのは確かでしょうから、そういった目的で取ることはありだと思いますが腸内細菌への影響から考えると「ノー」ということになってしまいますね。
糖アルコールではなくグルコース、ガラクトース、フルクトース
糖アルコールはほとんどビフィズス菌のエサにならないのに対して、その一方でものすごく良い反応を示しているのがぶどう糖(グルコース)、ガラクトース、フルクトースといった比較的メジャーな単糖類です。
特にぶどう糖は群を抜いて優秀で、ここに載っている全てのビフィズス菌が大きな反応を示したことがわかります。
グルコースは脳の唯一のエネルギー源とも言われているほど糖類ではメジャーな物質ですね。伊達に糖の知名度No.1ではないということです。
だからといってぶどう糖を含んだものを食べたとしても大腸に届かないというのが注意です。
そして、ここに載っている「スクロース」というのは砂糖の主成分であり、これもかなり優秀な反応を示していますが直接取っても吸収されてしまうので意味がありません。
ならばどうすれば吸収されずに大腸へグルコース、フルクトース、ガラクトースを届ける事ができるのかというと、単糖でそのまま取るのではなく、人が吸収・分解しにくいような少し複雑な糖類を取ることです。
少し複雑な糖類というのは具体的にはオリゴ糖のことですね。
糖アルコールよりもオリゴ糖が効果的!
オリゴ糖と一概に言っても様々な種類があります。
オリゴ糖というのは糖類が数個くっついた構造をしている少し複雑な糖類全般のことを言い、特定の物質を指す言葉ではありません。
つまり構成する糖の種類、結合している個数、あるいはどうやってくっついているかという物理的な構造によって様々な種類のオリゴ糖が存在するということです。
それこそ糖アルコールで構成されているオリゴ糖もありますが、糖アルコールでは他の糖類に比べてそこまでビフィズス菌活性効果が高くないというのは前述のとおりです。
カギになるのはグルコース、フルクトース、ガラクトースといった高いビフィズス菌活性効果を示した糖です。
つまりこれらの糖から構成されているようなオリゴ糖こそが、より効率的にビフィズス菌を活性化出来るオリゴ糖ということになりますね。
実は先程の表の中にもオリゴ糖は存在していて、それはラフィノースというものです。
ラフィノースは甜菜(ビート)から取れるオリゴ糖で、てんさいオリゴ糖とかビートオリゴ糖なんて呼ばれ方もしています。

基本的に糖類は単純な構造になるほどそのビフィズス菌活性効果は高くなり、複雑になるほど低くなっていきます。
その点で言うとオリゴ糖であるラフィノースは単糖類に比べて不利なはずなのですが、ぶどう糖やガラクトースと比べても遜色ない反応の良さを示していますよね。
これはラフィノースが3つの糖から構成されていてオリゴ糖の中では比較的小さいというのもありますが、それ以上にラフィノースを構成している糖の種類が関係していると思います。
そう、ここまでのお話ですでにおわかりかもしれませんが、ラフィノースを構成している3種類の糖というのはぶどう糖(グルコース)、ガラクトース、フルクトースの3つなのです。
ラフィノース以外にもこの三種類から作られているオリゴ糖はあります。
例えば乳糖(ラクトース)はグルコースとガラクトースから作られていますし、フラクトオリゴ糖はスクロース(グルコースとフルクトースの結合体)にフルクトースが幾つかくっついて作られていますのでこれらのオリゴ糖もビフィズス菌活性に効果的です。
そして、こういったオリゴ糖は一種類だけではなく、数種類のものを一緒に取ったほうがより効果が得られます。さらにはその比率なんかも大事ですべての種類のビフィズス菌が最も活性化する黄金比率なるものが存在するのです。
腸内細菌は数百兆個ありますから、一種類だけ取ってビフィズス菌を活性化というのは難しいのでしょうね。
そもそも母乳には100種類ものオリゴ糖が含まれていてそれが赤ちゃんの腸内のビフィズス菌に働きかけていると言います。
100種類はさすがに厳しいですが、それに準じた効果が得られるようなオリゴ糖を選ぶようにしましょう。
まとめ:糖アルコールとは?その種類や覚え方は?腸内細菌への効果は
糖アルコールとは何なのか?ということやその種類、腸内細菌への効果についてお話してきましたが、まとめると
・糖アルコールは糖とアルコールの性質を合わせ持ったもの
・糖アルコールは吸収されずに大腸へ届くが、ビフィズス菌活性効果はそこまで高くない
・糖アルコールよりもオリゴ糖のほうがビフィズス菌活性効果が高い
ということですね。ビフィズス菌活性効果はそれほど高くないとはいえ、虫歯になりにくくビフィズス菌もちょっとだけ増やせるかも?という意味ではそれほど悪くないように思えますね。