食物繊維を多く含む食品としてよく知られているのが「こんにゃく」ですよね。
こんにゃく芋にはマンナンという食物繊維が含まれているので、これを取ることで善玉菌のエサになって腸内フローラの改善に役立つという理屈なわけですが、実はこんにゃくの製造過程においてマンナンの性質が変化してしまうので善玉菌のエサにはなりにくくなってしまいます。
さらにはこんにゃく芋自体に元々「シュウ酸カルシウム」という毒物が含まれていて、それを水酸化カルシウムなどで化学処理して作られているのがこんにゃくだという衝撃の事実を以前書いた記事でお伝えしたところです。
そもそもこんにゃくに含まれるマンナンについて紐解いていくと、これはマンノースという糖類が直鎖状に結合した構造をしています。
マンナンが大腸に届いて分解されることで出来たマンノースを善玉菌のエサにしようというのが最終的な目的になるはずですね。
グルコマンナンという食物繊維もありますが、これも名前から分かるようにグルコースとマンノースから作られた構造をしています。
グルコースというのは砂糖の主成分であるスクロースを構成していたり血液にも含まれていて血糖値の指標ともなっているので聞き覚えがあると思いますが、ここで注目したいのはマンノースの方です。
水溶性食物繊維やオリゴ糖を取る目的というのは、最終的に大腸内で分解されて出来る糖類をビフィズス菌のエサにしたいというのが共通してあります。
ただビフィズス菌にも様々な種類があって、それぞれ好む糖類が異なるという事情があります。
そこで「マンノースはビフィズス菌が好んで食べるのか?」という疑問が湧いてきますよね。
なのでこちらでは
・そもそもマンノースとは何なのか?
・こんにゃく以外にマンノースを含む食品は?
・マンノースはビフィズス菌を増やすのに効果的なのか?
ということをお話していきたいと思います。
目次
マンノースとは
マンノースとはそもそも何なのかということをお話するうえで、念のために難しい化学的なお話も最初にしておかなければなりません。
マンノースとは単糖の一種であり、冒頭でも少しお話したようにこんにゃくに含まれる多糖類マンナンを構成していたり、単体として果実や果皮などにも天然に存在する糖類です。
人間の体内ではあまり代謝されない単糖類で、マウスの実験においてはその吸収速度がグルコースの五分の一以下になったという報告があります。
マンノースを含む食品とは
マンノースという糖類はそれほどメジャーなものではありません。それはグルコースと比べて圧倒的に吸収速度が遅いし、そもそも人体が代謝する量というのがごく僅かだからです。
だからマンノースを豊富に含む食品というのもマンノースのマイナー度に比例してそれほど報告がありません。
私が調べたところ、マンノースはクランベリーやアロエベラに豊富に含まれているということがわかりました。
あとは、マンノースの形が変化したマンニトールというものが干し昆布の表面についている白い粉として存在しているみたいですね。
うーん、なんだかどれも日本の食卓で一般的に食べられるものかというとマイナーな食品が多いですよね。
強いて言うなら干し昆布は和食っぽい気がするけど、欧米化が進む日本の食卓でこれを食べている家庭がどれほどあるのか疑問です。
マンノースのビフィズス菌増殖効果
当サイトにおいて消化されにくい糖質というのは最重要ワードになっています。なぜなら消化されないことで小腸で吸収されずに大腸へと届いてビフィズス菌のエサになることができるからです。
この点で言うとマンノースは、先程グルコースの五分の一の速度で吸収されたという話から「消化されにくい糖質」に当てはまりそうな気もします。
ただ、マンノースは食物繊維やオリゴ糖と違ってあくまで単糖類です。単糖類はその吸収速度に違いはあれども、大腸へ届く前に小腸で吸収されてしまいます。
例えばマンノースのサプリメントなんてものもありますけど、これを摂取する目的というのは
「マンノースを吸収させて代謝されずに尿から排出されることで膀胱や尿道の有害な菌を抑制する」
というところにあります。代謝はされにくいけども吸収はされてしまうということなので大腸に直接届ける目的では使われていないのです。
単糖類はそのまま取っても腸には働きかけることが出来ないというのはマンノースに限らずグルコースなどでも同じことですが、では実際に腸に届いた時にビフィズス菌に対してどれほどの効果を発揮するのでしょうか?
実は、様々な種類の糖類を各ビフィズス菌がどれくらい利用できるのか?ということを研究してまとめた表というのがあります。
+・・・90~100%の菌株が分解反応を起こした
ー・・・90~100%の菌株が分解反応を起こさなかった
d・・・11~89%の菌株が分解反応を起こした
w・・・僅かに分解反応を起こした
この表におけるマンノースを見てみると、なんと半分以上のビフィズス菌がほとんど反応できなかったということがわかりますね。
その一方でブドウ糖は全てのビフィズス菌に反応を示したり、ガラクトースやフルクトースもほとんどのビフィズス菌が反応を起こしています。単糖類はそのまま使えますからね。腸内に届きさえすれば最も効率よく代謝できるというのは当然のことです(何度も言いますが、これらを直接取っても大腸へ届く前に吸収されてしまうので意味がありません。)。
マンノースにおけるビフィズス菌の反応しにくさは、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース、フルクトースなど同じ単糖類であるはずのこれらと比べると一際目立ちますよね。
何しろマンノースよりも分子量が大きいオリゴ糖の一種であるラフィノースよりも反応しにくいのですから。
こうなると、マンナンを食物繊維の主成分として含むこんにゃくは腸内フローラの改善にそれほど役立つものではないということになるでしょう。
そもそもこんにゃくに含まれるマンナンは、こんにゃくを製造する過程でアルカリで中和されて水溶性食物繊維から不溶性食物繊維に変わってしまっています。

ただでさえビフィズス菌のエサになりにくいマンノース、あるいはマンナンが不溶性食物繊維に変わることでさらにビフィズス菌のエサになりにくくなっているのです。
マンノースを含む食品ならこんにゃくに限った話ではなく、もちろん何も取らないよりは多少の効果があるとは思いますが「それが最適な手段かどうか」という問題に対しては違うと言わざるを得ません。
マンノースより効率が良い糖を取るには
マンノースを含む食品がそれほどメジャーなものではなく、かつマンノースそれ自体にそれほどビフィズス菌活性化の効果がないなら、他にもっと効率の良い糖を取ったほうが良いですよね。
先程の表を見ると、グルコースやガラクトース、フルクトースといった単糖類がビフィズス菌を増やすのに効果的に見えます。
ただし何度も言うように、これらを直接取ったところで大腸に届く前に吸収されてしまうので意味がありません。
そこで、「大腸まで分解されない糖」つまりオリゴ糖の出番というわけなんですね。先程の表で言うとラフィノースなんかはオリゴ糖に当たります。
ラフィノースは北海道で作られる甜菜(ビート)から取れるのでビートオリゴ糖とかてんさいオリゴ糖なんて呼ばれ方もしていますね。

ラフィノースそれ自体のビフィズス菌活性効果もありますが、それ以上にラフィノースが腸内で分解されて出来る糖というのが、ビフィズス菌が高い反応性を見せたグルコース、フルクトース、ガラクトースの3つなのです。
ラフィノースは臓器移植の際の保存液としても使われるほど安全性が担保されていて非常に効果の高いオリゴ糖です。
ただビフィズス菌を増やすためにはラフィノースだけ取るよりも、他の種類のオリゴ糖も一緒に取ることでより効果が得られるようです。まあ腸内細菌というのは数百兆個もの細菌がせめぎ合っているという私たちには想像もできない環境で生きていますから、ことはそう単純にはいかないのでしょうね。
以上のことから、私はマンノースを取ることよりもラフィノースを中心としたオリゴ糖を何種類か取ることのほうがより高い効果が得られるという風に考えております。
まとめ:こんにゃくに含まれるマンノースの性質や代謝について。他の食品は?
マンノースという糖類についてお話をしてきましたが、まとめると
・マンノースが含まれる食品にはあまりメジャーなものがない
・マンノースは他の単糖類と比べてビフィズス菌活性効果が低い
・マンノースよりもオリゴ糖の方がより効果的
ということですね。おそらく今までもマンノース単体を取ろうって言う人はあまりいなかったかもしれません。ただ「こんにゃくに含まれるマンノースが便秘改善に~」なんていう謳い文句には気をつけましょう。