エストロゲン欠乏症状、いわゆる「更年期障害」というものは閉経後の女性が陥りやすい病気です。
更年期障害はホットフラッシュやほてりなどが代表的な症状ですが、「骨粗鬆症」というのもその一つです。
なぜエストロゲンが欠乏すると骨粗鬆症になってしまうのでしょうか?
エストロゲン欠乏による骨粗鬆症のメカニズムと改善方法をお話していきましょう。
目次
骨は新陳代謝を繰り返す
エストロゲン欠乏による骨粗鬆症のメカニズムを話す前に、骨の新陳代謝についてお話しなければなりません。
実は骨も新陳代謝を繰り返しています(骨折が治ることを考えたら当たり前の話ではあるのですが)。
成長期の子供はもちろん、成人であっても約三年間で骨が丸ごと生まれ変わります。
骨が新陳代謝を繰り返す理由は
- カルシウムを体中の組織に送り出すため
- 古い骨を若返らせるため
の二つがあります。
1について少し補足すると、骨は「カルシウムの貯蔵庫」という役割を果たしています。
カルシウムが体の中で不足すると骨から溶かし出されて、逆にカルシウムが余ると骨に蓄えているのです。
このカルシウムの出し入れにより、結果として骨が生まれ変わるというわけなのです。
2についての話が、正に表題である「骨粗鬆症とエストロゲン欠乏」に関わってきます。
骨を生まれ変わらせるカギとなるのが、新しく骨を作る「骨芽細胞」と古い骨を壊す「破骨細胞」という二つの細胞です。
骨芽細胞
骨芽細胞は、新しい骨を作る細胞です。
骨の基質であるコラーゲンなどのタンパク質を分泌して骨の土台を作り、ここに血液中から運ばれてきたカルシウムが付着することにより新しい骨が作られます。
破骨細胞
破骨細胞は、その名前の通り「古い骨を破壊する」細胞です。
破骨細胞が骨にくっついて酸や酵素を放出することで骨を溶かし、血管を通して体中に運ばれます。
※参考 雪印メグミルク
骨粗鬆症というのはこの骨芽細胞と破骨細胞の新陳代謝のバランスが崩れることで引き起こされます。
エストロゲンと骨密度の関係
骨粗鬆症のメカニズムは、破骨細胞が過剰に働いて骨を溶かしすぎてしまうというものです。
そして、この破骨細胞の働きをコントロールするのが他でもないエストロゲンなのです。
例えば、エストロゲン分泌量と骨密度、骨粗鬆症の発症率の相関を示したグラフがあります。
※参考 更年期のココロエ
エストロゲンの分泌量に比例して骨量も増減しており、中でも50歳前後の閉経を境にして一気に骨量が減っているのが顕著に表れていますね。
エストロゲンが骨粗鬆症と関係しているのは明白です。
カルシウム摂取だけではダメな理由
カルシウムといえば骨、ということで骨粗鬆症のためにはカルシウム摂取のほうが良いんじゃないの?と思うかもしれません。
もちろん、骨粗鬆症改善のためにカルシウム摂取は必須です。
しかし、更年期のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症は破骨細胞による骨の破壊力が強く、カルシウム摂取だけでは骨の再生が間に合わないのです。
だからこそ、先ほどのグラフのようなエストロゲンと骨量の関係を如実に表したものがあるのです。
①カルシウム摂取すること
②破骨細胞の働きを抑えること
という二つのアプローチを同時に取る必要があり、破骨細胞の働きを抑えるためにエストロゲンを増やすのが必須なのです。
男性は骨粗鬆症にならないの?
エストロゲンが骨粗鬆症に関わっているとしたら、一つ疑問に思うのが「男性は骨粗鬆症にならないの?」というものです。
実は、男性ホルモンも骨の代謝に関わってきます。
だから加齢によって男性ホルモン分泌が低下することで男性の骨粗鬆症の発症率も高まります。
しかし男性は女性と比べると
①元々骨密度が大きい
②加齢に伴う男性ホルモンの低下が緩やか
③男性ホルモンが体内で女性ホルモンに変換される
という3つの違いがあるので骨粗鬆症になりにくいのです。
そのため、統計上では男性で骨粗鬆症にかかっているのは女性の1/3ほどと、圧倒的に少なくなっています。
とはいえ男性の骨粗鬆症は発症後の死亡リスクや生活障害の度合いが女性より深刻なので、より注意が必要ですね。
エストロゲンを増やすには?
今回は更年期のエストロゲン欠乏症に伴う骨粗鬆症のお話なので、女性に絞って話を進めていきます。
エストロゲンを増やすことが骨粗鬆症の改善に効果があるのは明白ですが、このエストロゲンを増やすのがなかなか難しいです。
エストロゲンを増やす代表的なものは「大豆イソフラボン」です。
正確にはエストロゲンを増やすというよりは、エストロゲンと似た構造をしているので代わりに働いてくれるというのが大豆イソフラボンです。
そして、最近は大豆イソフラボンの中でも「エクオール」という物質に注目が集まっています。
エクオールは「スーパーイソフラボン」とも呼ばれるほど高い効果を発揮するイソフラボンで、大豆に含まれる「ダイゼイン」というイソフラボンが腸内細菌によって変換されることで作られます。
しかし、このダイゼインをエクオールへと変換できる腸内細菌「エクオール産生菌」がない人はエクオールをうまく作り出すことができません。
だから、エクオールをうまく作り出すために腸内環境を整えてエクオール産生菌を増やすことがエストロゲン欠乏による骨粗鬆症の改善につながってくるのですね。
腸内環境を整えるのが面倒くさいなら・・・
エクオール産生菌に限らず、腸内環境を整えるアイテムとしてはオリゴ糖がうってつけです。
しかしオリゴ糖ではエクオール産生菌だけをピンポイントで増やすということを考えると少々効率が悪いです。
それに、オリゴ糖で腸内環境を整えることを考えると1カ月~3か月くらいの期間を見なければなりませんので、すぐに効果がほしい!というせっかちな人にとっては続けられないかもしれません。
そこでオススメなのは「エクオールそのものを取ってしまう」という方法です。
大豆イソフラボンを腸内環境と同じ環境にして特殊な発酵をさせることで、エクオールを直接取ることが出来るサプリメントもあります。
例えばノムダスというサプリメントです。
ノムダスにはエクオール(大豆発酵抽出物という名前で成分表に記載)の他、エクオール産生菌であるビフィズス菌bb536を含みます。
この他にもオオバコ種皮、菊芋、デキストリンといった食物繊維を配合しているので腸内環境を整えてエクオール産生菌を育てることもできます。
エクオールや大豆イソフラボンについてもっと詳しく知りたいという方は、エクオールとは何か?の話をご覧いただければと思います。
まとめ:エストロゲン欠乏症が引き起こす骨粗鬆症のメカニズムとは?
骨粗鬆症は骨の新陳代謝のバランスが崩れることで引き起こされます。
古い骨を破壊する破骨細胞の働きは女性ホルモンの一種であるエストロゲンによって制御されており、更年期になった女性が骨粗鬆症を発症しやすいのはエストロゲンが欠乏することが原因です。
エストロゲンを補うにはイソフラボンがありますが、イソフラボンの中でも高い効果を発揮する「エクオール」は腸内細菌による効果なので腸内細菌の働き、腸内環境の改善が必須です。
腸内環境の改善には時間がかかるので、すぐに効果を得たいという人にはエクオールを直接取ることが出来るサプリメントが良いでしょう。